このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2016年1月11日月曜日

実生台木を作る ー2 ゴンベエさんの種まき

天気予報が変わって明日は傘マーク。土が湿ると作業がやり辛くなるので、急遽台木用のタネを蒔くことにしました。台木用ノイバラのタネは11月中旬に採取し、「実生台木を作る ー1」で紹介したように 冷蔵保存しておいたものです。

たおやかな胴長美人を

接ぎ木する部分がきれいな台木を、私は「たおやかな胴長美人」と喩えています。そのような台木を作るには幾つかコツがあるようです。バラ苗生産農家にそれを教えてもらったので、このシリーズでは「胴長美人」を追いかけてみます。

ノイバラ台木

「良苗率」は?

「実生台木を作る ー1」の「捕らぬタヌキの皮算用」で、「良苗率」が曖昧なのに気づきました。発芽してそこそこ育ったとしても、接ぎ木する部分が短かったり曲がっている台木は使いにくいものです。根が分岐する部位から「バッドユニオン」=芽(枝)が集中して出る部位までが素直に長く伸びている台木が好ましいですね。そのような「たおやかな胴長美人」を作るには、播種と定植までの幼苗の段階でほぼ決まると思います。

左の台木は福岡県筑後のバラ苗生産農家が作った台木です。根や胴の状態がとても良好です。このような台木が作れるようになりたいと思います。ただしこの台木はたぶん1〜2週間程度は?水に浸けられていたようで、根がやや傷んでいるように見えます。

関連記事:2014年11月19日「穂木と台木の充実度がポイント バラの接ぎ木」

「良苗率」に自信が無いので、蒔く間隔を計画の3cmから5cmに拡げて、その分苗床を少し長くして600粒のタネを蒔くことにしました。必要な苗は 200本なので、発芽率を50%とすれば3本のうち2本が良苗であればいい計算になります。

ノイバラ台木の苗床を作る

「ダイコン十耕」 バラの場合は?

きれいなダイコンを作るには「ダイコン十耕」といって畝を何度も深く耕起して細かく砕土します。バラの場合はどうなんでしょうね? そんなことを思いながらトラクターで「十耕」しました。土が湿っているのであまり細かくはできませんでしたが、雨が降る前に種まきしたいのでやむを得ません。

畑土には、残り物の堆肥や籾殻燻炭、ボラ土、パーライトなどを混ぜましたが、いずれも少量なので入れたのがわからない程度です。

元肥は「土と植物の薬膳」(現商品名:「土の薬膳」)の 粉体 を2Kg入れました。1平米あたり500gで「全層施肥」です。「土と植物の薬膳」にはペレットと粉体の2種類がありますが、5ヶ月間の栽培なので粉体を選びました。

手前のトロ箱に入れているのは覆土用です。畑土から、篩(フルイ)を使って赤玉土中粒より大きいゴロ土を除きます。6月になったら、右奥の畝(12M)に200本を定植する皮算用。

耕土の深さと根の状態

これまでの経験では、耕土が深い場合は太根が長く伸び、逆に根域が制限されると細根が多く出る傾向があるようです。
今回は苗床ですし、あまり深くは耕起しませんでした。トラクターの耕耘爪が楽に届く深さの20cm程度です。実生苗を掘り上げて定植する時期には、根長は30cmになっていると思われますが、細くて長い根は定植時に切るので、長さよりも本数が多いほうが好ましいと思います。さてどうなることでしょう。

参考事例 プロの場合:「いぶし銀のバラ屋|バラの台木選別」

スポンジケーキみたいな苗床

「スポンジケーキ」みたいな苗床

近所の農家のおばあちゃんに、『◯◯ちゃんが作る畝はスポンジケーキみたいね』と笑われます。『◯◯ちゃん』とは私のことで、この歳になっても『ちゃん』です。笑(ありがたいことです)。
・・だって、あんなに小さいタネだもん、土の団粒よりも小さいんじゃないかな。でも、それでも発芽するんですね。植物はすごいよ。

スポンジケーキに「水糸」を張って畝幅を調整しています。ほんとにアホだね。

覆土は1cm

腰の痛さよ、バラのタネ蒔き

「筋蒔き」するつもりでしたが、発芽率を正確に見るため「粒蒔き」にしました。ベッドに指で深さ1cmの穴をあけ、そこにタネを一粒づつ「捻り蒔き」で入れていきます。
5cm間隔で1列に15粒。列間は10cmで、40列です。これで600粒。

寒さは苦になりませんが、腰が痛い。10粒蒔いては立ち上がり腰を伸ばして、種蒔きだけで2時間ほどもかかりました。発芽率は75%程度とわかってはいても、ふと不安がよぎります。『うまく発芽してくれよ』

覆土は1cm。畑土6:バーミキュライト3:籾殻燻炭1の割合です。篩を使ってケーキに粉砂糖をかけるように被せました。1M X 4M の苗床なので、1cmの覆土なら40Lで足りるはずですが、全然足りません。計算を間違っている?(算数苦手)。結局60L覆って妥協しました。「スポンジケーキ」みたいなふかふかの畝なので「鎮圧」は平鍬を使ってしっかり押さえました。これでタネは(植え穴の中なので)地表から1cm下にあると思います。「バラ播き」したもの(2012年2月の記事:「バラの種ばら播き」)と較べれば、今回は深いはず。

ビニールトンネルを設置

イタズラカラス

畑を見下ろす北側の山にはカラスの巣があって、4〜5羽が作業を始めた頃から騒がしく飛び回っていました。これまでも弁当やおやつを盗られたことがありますが、困るのは、播種した畝に興味があるのか、畝の土をほじくり回すことです。それをやられると腰の痛さを我慢してタネ播きしたのが水の泡。この悪戯を防ぐ目的もあって、ビニールトンネルを設置しました。

ビニールトンネルは、強い雨に叩かれてタネが弾き飛ばされたり表土が固まるのを防ぐ効果もあります。

じつは、この苗床はまだ完成していません。畝の全面に「籾殻燻炭」を1cmの厚さに敷きます。今日は時間切れでそこまでできませんでした。ビニールトンネルと籾殻燻炭、順序が逆ですが、カラス対策のためやむを得ません。

覆土を厚くしさらにその上に籾殻燻炭を敷くのは、初生葉(双葉)が出る位置をできるだけ高くし「胴長美人」を作るためです。タネが発芽するとき光を必要とする「好光性種子」と、逆の「嫌光性種子」がありますが、バラはそのどちらでもない(発芽と光が関係しない)種子のようです。曖昧ですが、少なくとも「好光性種子」ではないことは確かでしょう。 参照:タキイ種苗|山田式家庭菜園教室|タネの発芽不良の原因と対策

したがって、覆土を厚くしたりその上にさらに籾殻燻炭を被せることが、発芽を妨げることはなさそうです。もちろん程度ものですが、その辺りを探ることも今回のテーマのひとつです。

関連記事: 2012年4月25日「ノイバラ台木の実生苗作り(プロの場合)」
2012年4月29日「ノイバラ台木の実生苗作り(プロの場合)−2」

1月20日追記:裾の始末

昨日は瞬間最大風速20m/sの風が吹いたのですが、トンネルはだいじょうぶでした。

トンネルの裾にプラスチックの薄いボードを入れて、風が入らないようにしました。これには、この後入れる籾殻燻炭の飛散を防止する目的もあります。

12Lほど潅水しましたが、夕刻にはうっすら結露していました。透明マルチの薄いビニールで作ったトンネルですが、それなりに保温効果もあるようです。

2月9日追記:「籾殻燻炭」でマルチング

播種から30日が経過。この簡易なトンネルは1月24日の大雪にも耐えました。遅ればせながら今日「籾殻燻炭」を入れました。ビニールを捲るとちらほらと緑の双葉が出ています。『しまった、遅れたか』

でもそれにしても早過ぎるのでは。
よく見るとそれは雑草のようです。不規則にあちこちに(タネを蒔いていない部分にも)出ているのでノイバラではないと気づいて、ほっと安心。

籾殻燻炭は約40Lを被せました。5mmから1cm程度の厚さです。その後3回目の水やり。これからは気温が上がってくるので、換気や潅水に注意が必要になってきます。

発芽は、播種から50日後の今月末頃になると思われます。これからしばらくは期待と不安の日々が続きます。はやく発芽しないかなぁ。

2月14日追記:発芽の兆し

昨日13日は南風が吹き小雨模様。『ラッキー、これで潅水の手間が省ける』とビニールトンネルを捲り上げていました。そのまま「スタンダード芽接ぎ挿し」の作業に没頭し、夕刻から風雨が強まったのに気づいたときは土砂降りで、やむなくそのまま放置。

今朝見に行くと案の定籾殻燻炭が風に吹かれて片寄っています。ところが、籾殻燻炭が薄くなった部分に芽が出ていました。一定間隔で列になっているのでこれは(たぶん間違いなく)雑草ではありません。右側の尖った双葉は雑草ですね。左端の糸のように細いものはノイバラだと思います。

1月11日の播種から34日後です。私の予想よりは早い発芽ですが、これはホンの一部ですから発芽が揃うのはもう少し後になるでしょう。籾殻燻炭を被せたのは5日前ですが、ぎりぎりセーフだったのか、その効果が出て「胴長美人」になりそうな気配はあります。

とりあえず一安心(・・と言うか、小躍りしたくなるほど嬉しい)です。

実生苗による台木作りは初めてのことではなく、量の差はあれ毎年ノイバラのタネを蒔いているのに、今年は特に嬉しいのは、テストではなく「本気蒔き」だからなんでしょう。

バラの栽培を始める前は野菜を作っていました。その頃も同じでしたが、栽培で私がいちばん嬉しいことは「発芽」です。『収穫が嬉しい』と言う栽培者は多いだろうと思いますが、私は収穫はもっぱらバーバラまかせ。それは今も続いているようで、私はみごとに咲いたバラを愛でることよりも(そんな花を咲かせたことがないけど/笑/それなりの花がかってに咲いてくれるだけ)、接ぎ木苗がグングン育ったり、今回のように発芽するのを見るのが好きです。ロザリアンやガーデナーというより、私はやはり「百姓」(ゴンベェさん)なんですね。

師匠のデービッドさんも似たようなことを言っています。「バラの交配 初めの一歩 | バラの栽培でいちばん楽しいこと」。似てるとしても、デービッドさんの場合は「自分で交配してできた種を播いて‥」ということですから、レベルが違いますが。

このページを読んでくださっているあなたは、バラの栽培でいちばん楽しいことはなんですか?

2月22日追記:発芽を確認

播種から6週間後。生育の良いものはこの程度の大きさになりました(根端は切れています)。覆土やマルチングの厚さにムラがあるので、この時点では未だ揃っていません。

マルチングした籾殻燻炭が部分的に厚過ぎたかもしれず、水やりも足りなかったようで、発芽率は75%以下になりそうな感じです。

厄介なのは同時に雑草も芽吹いてくること。特に、大量に発芽する「ホトケノザ」の双葉は形がそっくりです。本葉が見え始める時期には色で区別がつきますが、そのまま放っておくと「ホトケノザ」の伸びる根がノイバラの根に絡まって拙いと思うので、見つけしだい除草しています。



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