このブログについて


バラの栽培についての考え方や方法は多様です。その多様性こそが、バラが文化として豊かであることの証左なのでしょう。
"答え"は一つではないとすれば、バラ栽培の楽しさは、"自分のバラの世界を見つけ出す" その過程にあると思っています。

このブログは試行錯誤中のバラ栽培の記録です。一部の記事はバラ仲間に私の方法を紹介するために書いたものもありますが、
「栽培ガイド」の類ではありません。バラ栽培を始めた頃に書いた記事の内容は現在の栽培方法とは異なるものも多く、
技術的にも拙くて誤謬も多々含まれていると思われます。批評的に読んでくださるようお願いします。

2012年7月1日日曜日

バラの 水挿し −3

6月3日に投稿した「バラの 水挿し −2」で書いたように、バラサークルのMさんから預かったHT品種の枝を6月1日に水挿しにしました。それから1ヶ月が経過しました。その様子をレポートします。

バラの水挿しの発根

バラの 水挿し1ヶ月後

左の写真は6月1日に投稿した写真と同じ挿し穂です。

今日7月1日では、どの挿し穂も1枚の葉も枯れることなく(変色すらせず)、カルスの一部が「根」になり始めています。しかし「芽」が動き始めたのは1本の挿し穂のみです。

この他にも幾つかの品種を水挿しにしています。そのほとんどが不要なベーサルシュートなど、未熟な枝を挿し穂にしたものですが、葉が黄変し落ちたものもあります。でも、それでもしっかりカルスができているものもあって、一概に『こうだ』とは言い切れない状況です。

葉の黄変は気にしない

以下は想像ですが、バラ(植物)は賢くて、自分の今の状況(環境や内部に蓄えている養分)を判断して、もし養分が不足すると思ったら積極的に葉の養分を茎に移して、それを発根や発芽の材料やエネルギーにするのではないでしょうか。その結果、葉は黄変して落ちますがカルスの形成は(むしろ)早いような気がします。

中には、葉が黄変して落ちてもカルスができない(同じ品種の)挿し穂もあります。これは、基部の調整ミスや雑菌のせいでなければ、それだけ枝が未熟だったのでしょう。

Mさんの枝のような、私の枝よりも比較的しっかりした挿し穂は、葉の養分までも使う必要はないのだろうと思います。カルスの形成はややスロー(10日遅れて水挿ししたモスローズのカルスはこれより大きい。でも葉は枯れて落ちた)ですが、でもたぶんこれからの成長は早いのではと思います。

成否は穂木の品種と充実度

左の写真2枚目の茎の断面を見ると木質部が未発達ですね。緑枝挿しの場合、成否は穂木の充実度(木質部の有無という意味ではない)にかかっていると思うので、穂木の採取時期とその部位を慎重に選んだ方が良さそうです。

何度も紹介していますが、"The Difference Between Own Root and Grafted Roses" (YouTubeビデオ)の4:20から始まるシーンで、ポールさんは実に簡単に挿し穂を調整しているんですけどね。適切な充実度の穂木なんでしょう。私みたいに「不要なベーサルシュート」ではこうはいかないようです(笑)。

ポールさんの場合は水挿しではありません。挿し穂は2節で調整、残す葉柄は1本、葉は2枚程度のようですね。1ヶ月経過した2つの事例の大きな違いは「根」です。ポールさんの場合はすでにしっかりした "root ball" ができています。やはり水挿しは発根まで時間がかかるのでしょうか。

2013年2月追記
この水挿しのその後の経過は、2013年2月8日の記事「バラの 水挿し −4」をご覧ください。

ミリオンAにも注意

ところで。
今シーズンの全ての水挿しには「 "ミリオンA" を使っていますが、厳寒期とは異なりこの時期は水の腐敗に注意が必要なようです。僅かにでも水の透明度が落ちたら要注意。挿し穂の基部を触って「ヌメッ」としたら雑菌が蔓延っているのでしょう。この場合、そのままにしておくと挿し穂の基部から艶のある黒褐色に変わっていきます。表皮よりも内部の「髄(ずい)」で、より急速に雑菌が繁殖していきます。

「水挿し」なのに水が上がらず枯れる原因は2つあって、ひとつは導管内に空気が入った場合。もうひとつは雑菌が導管内に繁殖して塞いでしまう場合です。これらの場合は茎が黄変して挿し穂がゆっくり枯れていきます。
導管内に空気が入るのを防ぐには、採穂後すぐに水に入れ、「水切り」をします。

挿し穂に雑菌が付いていたり(例えば、切った枝を一時的にでも汚れた水に挿していたり)、土などが入ったりすると水質が悪化しやすいようです。ミリオンAを入れているからと油断できません。ミリオンAは水を浄化する効能はあるものの、殺菌剤ではない(メーカーによれば "静菌作用" )ですからね。水質悪化に気づかず、それで数本枯らしてしまいました。私の環境では1週間から10日ごとに水を交換する(同時にミリオンAを追加投入する)のが良さそうに思えます。

追記:その後の水挿しの経験から「1週間から10日ごとに水を交換する」では交換の頻度が少な過ぎます。ミリオンAの有無にかかわらず、できるだけ頻繁に水を交換する方がベターでしょう。その理由は水の「溶存酸素量」です。具体的なデータを持っていないので推測の域を出ませんが、水挿しの観察から今はそう考えています。

オスバンSも忘れずに

挿し穂の基部ではなく上部から枯れ(腐敗)が進んだものも少しありました。たぶん剪定鋏から雑菌(腐敗菌)が伝染したのでしょう。"オスバンS(逆性せっけん/ベンザルコニュウム塩化物液)" を使っての剪定鋏の消毒はけっこう頻繁にやってるつもりなんですが、こういう肝心なところでドジをします(笑)。
より重要なのは作業全体にわたって「清潔」を保つことですね。

ALGOFLASHも使ってみる

7月4日追記:もし穂木が未熟で葉が落ちるのなら、養分を補給するために「切り花活性剤」を入れてみたらどうなんなんだろう?と思いつき、 "ALGOFLASH" を入れてみました。それには水の腐敗防止の他に養分補給の効能もあります。

ミリオンAとの混用です。ところが15分過ぎても水が白濁したまま。
『あれっ、ALGOFLASHはミリオンAと相性が悪いのかな?』
・・なんとALGOFLASHと液体せっけんを取り違えて入れていました。容器の形状が似ているので、寝ぼけ頭には区別がつきませんでした。ドジ X ドジ。

開花枝を挿し穂に

今後は未熟なベーサルシュートではなく、夏剪定で切るであろう開花枝を挿し穂にして、幾つかの品種を試してみようと考えています。
バラの緑枝挿しはポールさんのようにちょいちょいと簡単にやってのけたいものですが、幾つドジを重ねるとそうなれるでしょうか。

2 件のコメント:

hime さんのコメント...

いつも拝見し勉強させて頂いております。
庭のバラの挿し木に毎年挑戦しては失敗の繰り返しでしたが、こちらを拝見し水挿しに挑戦しております。
5月下旬に水挿しを行い、ようやくカルスが出来てきました。
発根までには至りません。ここ数日の高温で水が腐敗し、毎日帰宅後に洗っては水を替えの繰り返しです。
カルスが出来ている現状で、挿し木に切り替えても大丈夫でしょうか?

そら みたか さんのコメント...

hime さんから頂いたコメントを見落としてしまい、大変失礼しました。申し訳ありません。5年半後の返信です。

「水挿し」は簡単に発根することもあるのですが、多くはとても時間がかかります。その原因は単純ではなさそうです。

挿し木については、これまで何度も紹介した「岐阜大学応用生物科学部園芸学福井教授のHP」の「 挿し木の基本」がとても参考になります。「厳密にはカルス形成と根原基の形成とは無関係であり、過度のカルス形成は禁物」という、カルス形成と根原基分化との関係の指摘は、私にとっては "目から鱗" でした。

私の "水挿し" の現在の方法は、2024年1月の記事:「ペットボトルでバラの水挿し」で紹介しています。水だけの場合よりも早く発根するようです。ただし、福井教授の「挿し木の基本」で指摘されているように、挿し木には様々な要因が絡むので、必ずしも『簡単だ』とは言い切れません。福井教授のページには、具体的な対策が詳しく説明されていますので、ぜひご一読ください。